【『緊急5提言・災害に強い街へ』(2011年4月4日配信)の記事もご覧下さい】
私が議員として初当選した03年から、5年間ほど近所の小学校で“夏祭り”を行っていました。その時に考え、「夏祭りの意義」として関係各所に配布していた内容が、災害に強い街づくりにとって(より具体的にいえば災害直後の共助・避難所運営)において一定程度有用ではないかと改めて感じましたので、まとめます。
端的に言えば、『“祭”のノウハウで地域は強くなる』です。
【今回の記事のベースとなる書類】
○“祭”は、食事提供・テント設営・人手把握・場内整理で成立する
表向きの祭りの見え方は色々ありますが、ベースとなる要素は同じです。これを自治会単位くらいの地域の人で運営すると、具体的に以下のようなことがわかります。
☆プロパンガス業者・電気業者・短管を持つ業者などが近隣にいるかどうか。
☆トイレや水道の数がその場所にどれくらいあるか。
☆テント・鍋・パイプいす・会議机などは近隣団体でどれくらい持っているか。
☆トラックを動かせる人は誰か。
☆動ける青壮年代の人がどれくらいいるか。
☆昼間、地元にいる人はだれか。
☆どの人(団体)に声をかけると手伝いの人が集まるか。
☆500~1,000人の群衆を整理するのにどのくらい手間・人員がかかるか。
☆大量の調理とはどんなものか。誰が長けているか。
○会議のノウハウと、現場のノウハウ
日常の地域運営は、住民意見の集約・会議運営・懇親などいわば調整の部分がメインとなります。祭りは事前準備の段階ではもちろんこういったノウハウが生きてきます。でも当日が近くなると、実行するためのノウハウがメインとなります。時間が区切られるなかで、決断をしなくてはいけない。もちろん当日は実行あるのみ。役割分担と自分の権限の範囲内で即断しなくてはいけない場面がほとんどです。
この両面のノウハウが必要となることで、それぞれの人の適性がわかります。現場に強いのはどちらかといえば決断の能力。とはいえ調整を意識した決断ができないと後から問われる場面がでます。その両面を備えたリーダーが浮き彫りになります。
『普段は偉そうにしていても、現場では頼りにならない』『考えなしに見えたが実は合理的』といったことが皆で共有できます。
また、リーダー以外の人の動きも見えてきます。『なんだかんだ言っても全体のために動いてくれる』『スッと肝心の場面でいなくなる』『必要な時に必要な気を利かせてくれる』などです。過剰な気遣いも現場では負担になりますし、人任せ過ぎる人も頼りにならない。過剰な興奮状態になる人も出てきます。
こういった情報を、祭りという人工的な非現実を通すことで共有することができます。
○応用編・行政機構と周辺地域の理解
学校や公共施設を会場とし、幅広く地域・行政関係者の協力体制を構築して祭りを行おうとすると、以下のようなことがわかります。
☆施設のカギはどこにあるか。管理者(部署)は誰か。
☆警察の日常的な人員体制。どれくらい地域を巡回しているのか。
☆集会所・事務所など、他団体がどこを拠点としているのか。
☆市役所はどれくらいの物資を持っているのか。融通は利かせられるか。誰が弾力的な運用をできるのか。
☆市全体レベルの団体、都道府県レベルの団体にはどういうものがあり、どういったノウハウを持っているのか。
☆誰が団体間交渉に長けているのか。内弁慶なのか。
このあたりは色々見方によってあるかとは思います。少なくとも普段は意識しないことがかなりの程度見えてきます。
上記は雑駁なところもありますし、それぞれがどう生きるのか説明足らずではありますが、思いつくままに記しました。
先人たちはあまり自覚的ではないにしても、こういったノウハウを脈々と積んできたようです。ところが地域コミュニティが力を失うとともにこういった感覚も失われているようです。また、青年会議所などの団体は伝統的にこういったノウハウを積めるような組織形態をとっていますが、どうも論理的・明示的に意識していないので結局こちらもノウハウの吸収や継承が薄れています。それではもったいない。
祭りを運営する5~10人程度の中心メンバーでこういったノウハウを共有できれば、いざという時に非常に頼りになりますので、地域ごとに意識的にそういった人材をつくることが必要です。それがより強いコミュニティをつくりますし、単にハードで終わらない防災力の強化となると考えています。